文字サイズ: |
バセドウ病に対して放射性ヨウ素を使った初めての治療の試みは、1941年にアメリカの2つのグループで行われました。その後、多くの人が放射性ヨウ素治療(アイソトープ治療)を受けてきましたが、治療量のアイソトープが白血病や甲状腺癌を起こすという証拠はなく、アイソトープ治療は安全と考えられております。
また、この治療には手術で見られる傷痕などの心配がなく、甲状腺の腫れが取れ、美容的にもアイソトープ治療は優れております。現在、アメリカではバセドウ病患者の80-90%がアイソトープ治療を受けています。日本でも、1998年から500メガベクレル(13.5ミリキューリー)までなら専門医療機関の外来で治療ができるようになりました。患者さんにとっては福音です。ただ、病状によっては入院して治療する場合もあります。
バセドウ病には薬物療法、手術療法とアイソトープ治療があります。
バセドウ病の患者さんは希望すれば、アイソトープ治療を受けられますが、特に次のような患者さんには良い治療です。
効果に個人差のあることが唯一の欠点です。そのためバセドウ病を確実に治そうとアイソトープの量を多くすると10年以内には、ほとんどの人が甲状腺のはたらきが落ちること(甲状腺機能低下症)になります。最近では、甲状腺機能低下症は欠点ではなく、治療効果と捉えられてきています。たしかに甲状腺機能低下症は放置するわけにはいきませんが、甲状腺ホルモン剤さえのめば、全く問題はありません。甲状腺ホルモン剤は体の中にある甲状腺ホルモンと同じものですから、基本的には適正な量をのんでいる限り副作用はありません。また、1年以上経過すれば、検査の頻度も半年~1年に一度でよく、経済的です。
アイソトープ服用後に一時的に眼症状が悪化することがまれにあります。そのため、アイソトープ服用時に予防的にステロイド剤を服用することがあります。また、アイソトープ服用後にまぶたの腫れ、物が二重に見えるなどの症状が増悪した場合、ステロイド剤などで治療します。
治療は、アイソトープのカプセルをのむだけです。
治療量のカプセルをのむ前に甲状腺にどれくらいアイソトープが取り込まれるか、摂取率検査をします。この検査もカプセルをのむだけで、服用3時間後もしくは24時間後に摂取率を測定します。アイソトープの取り込み具合をみて、投与量を決めるわけです。(投与量決定のための摂取率の測定は行わない場合もあります。)
海藻類(昆布、ひじき、ワカメ、のり、寒天など)、ヨウ素強化卵、昆布だしの入った調味料は、摂らないでください。
ヨウ素を多く含む医薬品(うがい薬、ヨード造影剤など)の使用も避けるようにしましょう。
病状により治療4日~14日前から中止し、治療後3日目から開始しても良いです。
病状により治療3日~7日前から中止します。
治療後3日目から開始しても良いでしょう。
病状により、甲状腺機能が落ち着くまで服用します。
服用したアイソトープのうち甲状腺に取り込まれなかったものは、ほとんど尿中に排出されます。ほんの少し、汗や唾液からも出ます。この放射線は人体に悪影響を及ぼしませんが、微量の放射線が出ていることをご本人に認識していただく必要があります。
以下に述べる注意は、被ばくを他人に与えないエチケットと考えてください。
ご本人に対して安全な治療法ですから、他人に危険を及ぼすことはありませんが、アイソトープ治療を受けた方のエチケットとして守っていただきたい事柄です。
いろいろ注意事項を書きましたが、アイソトープをのんで、本人が心配ないのに他人に影響がでるはずがありません。ご安心ください。
1~2ヶ月後には治療効果が現れてきます。3~4ヶ月後に一時的に甲状腺機能低下状態になることがありますが、多くの場合、自然に甲状腺機能は回復してきます。治療効果を見るために4ヶ月間は月に1回程度の間隔で受診していただきます。
また、1回のアイソトープ治療で効果が十分でない場合は、3~12ヶ月後に再度治療を行います。甲状腺ホルモンが低下している期間だけ甲状腺ホルモン剤をのんでもらうこともあります。そのまま、甲状腺ホルモン剤をのみ続ける必要がある人もいます。
治療効果が出てくると甲状腺の腫れは小さくなります。外から見ても分からないくらい小さくなります。手術は、メスで腫れた甲状腺を小さくしますが、アイソトープ治療は放射線で甲状腺の腫れを小さくします。アイソトープ治療で治ると再発はまれです。
ここが手術と違うところです。
こちらのページからパンフレット一括ダウンロードできます。
バセドウ病のアイソトープ治療に関して、よくあるご質問はこちら