研究者紹介 No.21

研究者紹介
更新日:2021年11月22日(所属・役職は更新時)

アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

科学館で学芸員として働きたいと思い、教育大学に進み理科教育を学びましたが、自身の興味から素粒子物理学実験の研究室に所属しました。研究室では、加速器で粒子同士を衝突させる大型実験に関わりました。衝突後に出てくる粒子をとらえ、新しい物理現象を発見します。その中で、放射線を可視化する半導体検出器に出会い興味をもちました。そして、検出器の性能評価試験を行う過程で放射線やアイソトープを利用した研究が始まりました。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

大学院修士課程在学時に、身近にあるWebカメラで放射線を検出する題材で教材開発を行いました。この時、自身の手で新しい放射線検出器を開発したいと強く感じました。またちょうどその時、高エネルギー加速器研究機構(KEK)で純国産の次世代半導体検出器「SOIピクセル検出器」の研究開発が進んでいることを知り、その魅力から、プロジェクトに関わるため博士課程への進学を決めました。とりあえず挑戦してみよう、という想いで実際に始めてみると、比較的自由に研究開発を進められる環境は、自身の性格にあっていました。これが、研究職へ進む決め手となりました。

学生の頃、熱中していたことを教えてください

写真を撮ることが好きでした。主に風景や星空を撮影していました。そこから、カメラ自体も好きになっていました。また、電子工作も好きでした。マイコンで様々なセンサを制御して遊んでいました。これらの流れが、現在の研究開発に通じていると思います。

現在の研究について

現在の研究内容,おすすめポイントを教えてください

純国産の放射線半導体検出器である「SOIピクセル検出器」を研究開発しています。回路部・センサ部を一体化した構造が特徴です。要素技術が完成し、実用化レベルに到達しています。身近な例では、スマートフォンを含むデジタルカメラの眼となる、可視光用「CMOSイメージセンサ」が近いでしょうか。その放射線版です。さらに、この技術を用いて、次世代宇宙X線観測用途の新しいイメージセンサを設計し開発しています。放射線を検出したタイミングを出力し、エネルギーを精度よく測定しながら天体を撮影する、これまでにないカメラのセンサです。観測の質を飛躍させる重要な役割を担います。近い将来、日本で計画中の次期X線天文衛星「FORCE」に載り、宇宙を観測するときが来ることを想いながら、日々研究開発を進めています。

研究を行う上で大事にしていること(モットー)を教えてください

課題に対し、根気よく取り組むことを大事にしています。研究開発を進める上で、思うように進まないことはあります。例えば、設計したイメージセンサから想定外の信号が出た時、要素を切り分け調べることで、原因を究明していきます。無事解決できた時は嬉しいですし、最後まで諦めずに粘ることが重要だと感じます。また、他分野の研究者と関わることも大事にしています。私自身は、放射線半導体検出器を研究開発していますが、情報交換しながら知見を広げることで、新たな応用を模索しています。

今後の目標、展望を教えてください

研究開発を進めているSOIピクセル検出器は、ようやく要素技術が確立し、実用化レベルに到達しました。あとは、信号処理回路を変えるだけで、放射線を検出する様々なアプリケーションに応用できます。観測対象に適した検出器をコーディネートし、放射線から得られる情報を用いることで、これまで見えなかった世界を覗いていきたいと思います。また、新たな検出器開発にも挑戦し、放射線の可視化技術の向上に貢献していきたいと思います。

学生へメッセージ

アイソトープや放射線を使った研究をしている(したいと考えている)学生へ一言お願いします

アイソトープや放射線を利用することで、我々は様々な情報を得ることができます。用途としても、科学研究から産業応用まで幅広いです。放射線に関連する研究は、それ自体だけでなく、可視化する技術も必要となるので、物理学からエンジニアリングまで、興味に応じ幅広く楽しめます。私自身、ひょんな事から放射線と関わることになりました。教育学・理学・工学と、他の研究者に比べ、複数の分野を経てまわり道をしましたが、全ての経験が生きていると感じます。興味をもつタイミングは関係ありません。気持ち次第で、いつでも挑戦できると思います。


武田 彩希(たけだ あやき)
専門
半導体検出器、放射線計測、量子イメージング
略歴
2009年 京都教育大学大学院教育学研究科修了 修士(教育学)、2013年 総合研究大学院大学高エネルギー加速器科学研究科修了 博士(理学)、京都大学大学院理学研究科 特定研究員、宮崎大学工学部電子物理工学科 助教を経て2021年より現職。