研究者紹介 No.15

研究者紹介
更新日:2021年1月20日(所属・役職は更新時)
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アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

小学生のころに向井千秋さんらが携わった宇宙メダカの子孫を分けてくれるイベントに参加し、そのときの担当の研究者が東京大学アイソトープ総合センターの方 で、そこで「アイソトープ」という単語を知りました。それから宇宙物理研究を志望しており、その中で今も開拓が不十分である電磁波領域:ガンマ線天文学に興味を持ち、その検出器開発の中で放射線の研究が始まりました。また、同時に行っていた生物物理でもリンの同位体を用いた研究なども身近にありました。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

悲しいことに、中学生~高校生の頃に、バブル崩壊後の景気回復がいよいよ見えなくなり大手証券会社や都市銀行が破綻する姿を見ておりました。また一方でIT技術を携えた新興企業が登場するなど、企業に行っても、その会社が何年も続く保証はないと考えておりましたので、就職しないことの不安は個人的には無かったです。それよりも、基礎・応用にかかわらず、社会の変革を比較的自由な立場から創成できる大学の研究職のほうに魅力があると考えていました。

学生の頃、熱中していたことを教えてください

鉄道が大好きですので、出張時にどのような列車に乗れるかが楽しみでした。実際に列車に乗るときには、乗客の流れと合わせて、下調べした現地の人口規模、産業構造を踏まえながら、どうしてそのような時刻表を組んだのか、時刻表製作者(スジ屋さん)の気持ちになって、考えるのが楽しいです。

現在の研究について

現在の研究内容、おすすめポイントを教えてください

現在は放射線を感度よく「見える化」するための材料開発、検出器開発を行っております。いわば放射線は量子世界と現実世界(古典的世界・普通の世界)との「メッセンジャー」ですので、正しくメッセージを理解するためには、高い感度をもつ検出器が必要です。たとえば、全く分かっていない「暗黒物質」の探査のための素子を作っていますが、そこでは、中性子やガンマ線といった既存の放射線がノイズになります。そこで、これらのノイズをいかに抑制・区別して、信号となる「暗黒物質のようなもの」を検出するかが重要です。そんな検出器はいままで存在しないので、自分で作るのですが、素子の材料開発から行うのはとても面白いです。

育成した放射線が⼊射すると光る「シンチレータ」とよばれる結晶の写真
(疑似的に紫外線をあてた時の様⼦を写真にしてありますが、実際の放射線でも同様の光が⾒えます)

研究を行う上で大事にしていること(モットー)を教えてください

研究のヒントは、他分野に転がっている可能性がありますので、いろいろな分野の研究・考え方について学ぶようにしています(水平思考のすすめ)。失敗をおそれずに長期的に取り組む課題、すぐに解決したい課題など、研究にも様々なステージ・フェーズがあります。それぞれの研究がどのフェーズにあるのか判断しながら、様々なフェーズの研究を大切にしながら、かつ、「面白いか」を問いながら、研究を進めることをモットーにしております。

今後の目標、展望を教えてください

日本の研究は、それぞれの研究室が非常に深い研究をされていますが、連携がまだまだうすいと考えております。もちろん今までも、共同研究は盛んにおこなわれていますが、近場での研究がほとんどであると感じます。いわば"研究の縦割り"打破を目指して、たとえば、分子生物と量子計測のように、大胆な横のつながりをもてるような、いわば"マトリックス組織"の構築・充実を図りたいと思います。例示のように、生物現象などこれまで量子計測が手薄だった分野での研究を広げていくのが個人的な展望です。また、廃炉関係については、ぜひサポートしたいです。

学生へメッセージ

アイソトープや放射線を使った研究をしている(したいと考えている)学生へ一言お願いします

現実世界ではなかなか体験できない、訳の分からない現象がいっぱいあって、とても楽しいです。たとえば、光が一定以上のエネルギーを持つと、そこから物質(と反物質)が生じ、またその逆の現象も起きます。でも、このような現象を利用して、現在では体内の「がん」の位置を特定するなど、現実世界でも大いに役に立っております。どうでしょうか、楽しいでしょ^^?


黒澤 俊介(くろさわ しゅんすけ)
専門
放射線物理、光物性
略歴
2011年京都大学大学院理学研究科修了 博士(理学),日本学術振興会特別研究員(PD) /東北大学金属材料研究所,同学金属材料研究所助教を経て2015年より現職。(2017~2019年までクロスアポイントメント卓越研究員・山形大学理学部助教)