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更新日:2025年5月23日
第29回RADIOISOTOPES誌 論文奨励賞の受賞者が下記5名に決定しました。受賞者には表彰状と副賞が贈られます。
今後のますますのご活躍を期待いたします。
表彰式の様子はこちら
受賞者 (投稿時の所属) |
掲載号 論文種別 |
論文タイトル |
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授賞理由 | ||
栄井 修平 (兵庫医科大学薬学部) |
Vol.73,No.3 原著 |
天然放射性核種の新規医療利用への提案 |
本論文は、天然放射性核種を活用した新たな医療応用の可能性について体系的に検討した意欲的な研究である。Rb-87面線源を用いたラット凍結乾燥骨切片の骨密度定量法を確立し、さらにK-40を利用して輸液中のカリウムイオン濃度を定量する手法を提示している。これらの成果は、天然放射性核種の有効利用に道を開く先駆的な取り組みと評価できる。以上のことから、論文奨励賞に値すると判断した。 | ||
沖田 将一朗 (国立研究開発法人日本原子力研究開発機構) |
Vol.73,No.3 原著 |
An Evaluation on Inelastic Thermel Neutron Scattering Cross-Section Data of Crystaline Graphite |
本論文は、結晶性黒鉛の中性子に対する非弾性散乱断面積評価に関して、1965年以来使用されてきたコードに代わる新たなコードを提案するものである。従前のデータライブラリは、ブラッグ端以下の低エネルギーにおいて実験値を再現していなかったが、新たなコードでは、1万以上の原子を配列してシミュレーションを行い、実験値を再現する信頼性の高い非弾性散乱断面積データを得ている。原子炉コアや加速器中性子発生施設の設計等に大きな貢献が期待できることから論文奨励賞に値すると判断された。 | ||
小池 弘美 (東京大学ライフサイエンス研究倫理支援室) |
Vol.74,No.1 ノート |
実例に基づく自然起源放射性物質の合理的な防護の一考察 |
本論文は、身近に存在する自然起源放射性物質(NORM)に着眼し、その合理的な取扱い方法に関する枠組みを提案している。我が国ではこれまで、取扱いと防護に関する規制法令がウラン、トリウムを含む指定原材料を扱う事業者向けのガイドラインを除き、存在しない。本論文は、非密封RIでの「管理区域」ではなく「監視区域」を設定して、作業者に対して個人線量限度の管理目標値を定めることを提案している。方向性を示したという観点からも、今後の放射線防護分野の発展の一助となるものと期待される。以上のことから、論文奨励賞に値すると判断した。 | ||
阿部 紀宜 (北海道大学大学院保健科学研究院医用生体理工学分野) |
Vol.74,No.1 ノート |
チューブリン重合反応に対するX線影響の検討―インビトロ再構成実験系を用いたアプローチ― |
本論文は、チューブリン重合反応に対するX線影響をインビトロ再構成実験系を用いて検討した結果、X線照射されたチューブリンは微小管核形成には寄与しないが、伸長反応には寄与する可能性を提示したものである。核形成と伸長反応への影響を分けて検討した点に独創性が認められ、放射線生物学に新たな視点を与える成果として、今後の発展性が期待できる。以上のことから、論文奨励賞に値すると判断した。 |
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内田 海路 (地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター) |
Vol.74,No.1 原著 |
有機塩基を用いたCO2捕集による簡便なバイオベース炭素含有率測定法 |
本論文は、バイオマス製品と石油資源由来製品の区別のための新たな簡便な方法を提案している。両者の識別には加速器質量分析法が用いられてきたが、装置が高価で実施できる施設が限られていた。著者らは試料を燃焼させ、発生したCO2を捕集して、その中の14Cをシンチレーションカウンタで計測することにより、廉価で簡便に両製品を区別することに成功しており、高く評価できる。以上のことから、論文奨励賞に値すると判断した。 |