研究者紹介 No.59

研究者紹介
更新日:2025年8月8日(所属・役職等は更新時)
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アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

私がはじめてアイソトープ・放射線に向き合ったのは大学院での研究です。所属させていただいた東北大学金属材料研究所・吉川研究室で、修士1年生から、ハロゲン化物シンチレータの材料探索と単結晶育成に関する研究に取り組みました。東北出身の私にとって、放射線には、福島第一原子力発電所の事故を思い出させる負のイメージがありました。自分の研究が大成し、高性能な放射線検出器を開発できれば、東北・日本の復興に少しくらいは貢献できるのではないか、と思って指導教員にしごかれながら頑張っていました。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

私の場合は、研究職に進むことが主目的で、そのための手段として単結晶シンチレータの研究を選んだ、という、よこしまな心境です。高校のころは理科の先生になりたいと思っていました。学部生時代は教職課程の単位も取得していました。しかし卒業研究が始まって忙しくなると、教職課程を放棄して、先生になる夢を一度諦めてしまいました。学部卒で就職するか、大学院に進学するか迷っていた時に、ふと「博士号を取れば、教員免許がなくても先生(=大学の研究者)になれるのでは!?」と思いつき、博士号を取得しやすそうな研究室を選んで大学院に進学しました。

現在の研究について

現在の研究内容、おすすめポイントを教えてください

研究内容は無機シンチレータの材料開発と単結晶育成です。シンチレータとは放射線を吸収して発光する光学材料であり、光センサーと組み合わせて様々な放射線検出器に搭載されています。特に赤~近赤外領域で強く発光する材料の開発に力を入れています。赤~近赤外光は半導体光センサーの感度にマッチする、様々なもの(生体や光ファイバー)を透過できるなど、紫外~可視光とは一線を画す特徴があります。既存材料にはできない放射線検出法への応用を目指し、日々研究に取り組んでいます。

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研究を行う上で大事にしていること(モットー)を教えてください

「やらない理由よりやる理由を考える」をモットーに研究に取り組んでいます。なんとなくやりたくない、疲れた、難しいから勉強したくない、自分の専門外だからやらなくてもいい等、「やらない理由」は簡単に見つかりますし、私たちの気持ちもなびきがちです。自分の研究の幅を広げ、より深いものにするために、もっともらしくやらない理由を考えることをやめて、「まずやってみよう」を合言葉に頑張っています。

あなたの好きな(縁のある)放射性同位体や元素を教えてください

好きな元素はハフニウム(Hf)です。Hfは原子番号72と重い元素で、ガンマ線をばんばん止めてくれる優秀な元素です。Hfを含む無機化合物はガンマ線用シンチレータとして有用だと期待されています。私が学生時代から取り扱っているハロゲン化物結晶も、ハフニウムを含む重い物質です。また、金属ハフニウムは耐食性が高く、金属アレルギーも出ないとされています。指輪やピアスなどの装飾品にぴったりです。

学生の頃、熱中していたことを教えてください

学生の頃は研究に熱中していました!と言いたいところですが、アルバイトや友人らとの旅行・飲み会に精を出してばかりいました。貯金を出し切ってロードバイクを購入し、宮城県内や北海道へツーリング旅行したり、某ゲーム機を買って友人と夜な夜なシューティングゲームに明け暮れたりして、楽しく過ごすことができました。ゲームは小学生のころからずっと好きで、いまもたまに学生とプレイしています。ボイスチャットで話しているうちに実験データや発表資料の打ち合わせを突然始めてしまい、嫌がられています。

学生へメッセージ

私感ではありますが、アイソトープ・放射線の研究分野は、他の分野にはないくらい、様々なひとが集まってできていると思います。放射線を使うアイディアを考えるひと、狙ったとおりに放射線を出す/当てる技術を開発するひと、放射線を検出するひと・・・。アイソトープ・放射線を旗印に、医学、生物、機械、電気電子物理、化学など様々な分野が合体しています。それだけ、いろんなことが学べるし、いろんな人に出会うチャンスがあります。内容だけでなく、他の研究者とのかかわりあいも、刺激的で楽しい研究分野です。


小玉 翔平(こだま しょうへい)
専門
無機材料科学、単結晶育成、光物性
略歴
2021年3月 東北大学大学院工学研究科材料システム工学専攻修了 博士(工学)、2021年4月より現職
HP
https://www.apc.saitama-u.ac.jp/inorgchem/lab/index.html