研究者紹介 No.41

研究者紹介
更新日:2024年1月19日(所属・役職等は更新時)
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アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

東日本大震災の汚染対策を知ったことが、研究職を始めるきっかけです。2011年当時修士課程2年の私は、研究職を考えておらず一般企業に就職する予定でした。しかし、卒業間近の3月11日に東日本大震災が発生し、その後の汚染対策として当時「ヒマワリを植えて放射性セシウムを除去(ファイトレメディエーション)」という動きがあることを知りました。修士課程当時、植物の重金属耐性メカニズムについて研究しファイトレメディエーションを学んでいた私は、「自分が行ってきた研究分野の知識を社会が欲している」という現状を目の当たりにし、研究職の使命に惹かれました。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

就職活動当時は、リーマンショック後ということもあり内定をもらえるだけでも一苦労だったので、研究職に進むことについては、家族・知人からは不安な意見を沢山いただきました。私は少し企業で働く期間があったのですが、やはり自身のモチベーションが別にあると長続きしないものでした。博士課程に入りなおした後でも不安を抱えながら日々実験をしていましたが、そんな中でRI(ラジオアイソトープ)イメージングに出会いました。「生物体内の元素の分布や流れが明瞭に見える!」と感動し、私の分野で使用している研究者も少なかったことから「これを活かせば研究職にしがみつけるのでは?」と考えたのを覚えています。

現在の研究について

現在の研究内容、おすすめポイントを教えてください

RIを使って植物の栄養・有害元素の吸収・蓄積メカニズムについて研究を行っています。植物は栄養または有害元素を吸収・蓄積する時に様々な遺伝子(正しくは遺伝子からコードされたタンパク質)を使います。この遺伝子の機能を自由に操作できれば、植物に沢山の栄養を吸収させることも、もしくは毒を吸収させないようにすることも可能になります。近年は亜鉛・セシウム・ナトリウムの吸収・蓄積に関わる遺伝子を探し、その遺伝子の影響をRIで可視化しています。遺伝子を破壊するか否かで元素の動きが大きく変化するので、遺伝子の機能評価にうってつけの技術です。

今までで研究をしていて苦しかったこと、辛かったことを教えてください

植物の育て方です。色々な研究室で仕事する機会を頂けましたが、その都度でその栽培環境を理解するのに時間がかかりました。実験予定に先んじて植物を準備するのですが、上手く育ってくれなかったことも良くあります。その時は、ラボメンバーと状況を共有してアドバイスをもらうことで乗り越えています。

あなたの研究人生において、影響を与えた方を教えてください

RIの使い方を1から教えてくれました筑波大学大学院の指導教員の古川純先生です。古川先生からRI実験をご教授頂けなかったら今の私の研究スタイルはありません。また、農研機構の内藤健先生には研究成果を伝える術を教えて頂きました。視覚的に訴えることのできる放射線計測技術はこの「伝える」という行為と相性が良く、内藤先生の発表を聞き、その術を盗む努力をしてきました。今こうして研究に打ち込めるのはお二人のおかげであり、ご指導に反しない活躍をしていきたいと思います。

あなたの好きな(縁のある)放射性同位体や元素を教えてください

Cs-137とNa-22です。理由は半減期が長いからです。植物の実験では、個体数を設け実験結果を検討するため、複数個体の実験が必要です。長い半減期の核種の場合では、実験時間が少し長引いてもほとんど影響がないため助かります。長い半減期の核種は万が一の汚染が怖いですが、集中して実験に臨むのでこれまで大きなトラブルを起こしたことが無いのも相性の良さを感じる点かもしれません。Cs-137は初めて扱ったRI、Na-22は研究職に就いて使い始めたRIということで、個人的な思い入れもあります。

今後の目標、展望を教えてください

私の研究は数年後に社会を動かすというものではありません。しかし、公開した成果をご覧いただき「この研究には応用力がある」「RIは便利なツールだ」と感じ、私の研究から他の研究へ枝葉が広がっていくのが目標です。その広がりが社会を動かす大きな成果になると信じ、今の研究を続けています。

学生へメッセージ

RIイメージングに関しては、「見える」というポイントを存分にアピールしてもらいたいです。視覚的な情報は数値以上の情報を提供してくれるありますし、学会などで記憶に残してもらいやすいため、色々な分野の先生方にお名前を覚えてもらえるきっかけになります。自身の成果を覚えてもらうのも研究やキャリアに重要なことなので、積極的にRIイメージングを使用してもらいたいです。新たに始める学生さんは被ばくを心配されると思いますが、最近では植物RI実験を支援するプラットフォーム(BRIng)があったりと、サポート態勢が出来上がっているので是非検討してみてください。


野田 祐作(のだ ゆうさく)
専門
植物栄養学、分子生物学、放射線計測技術
略歴
2017年3月 筑波大学にて博士(学術)取得し、国立研究開発法人 農研機構 遺伝資源センター(つくば)植物多様性活用チーム 契約研究員、 ベルギー王国 ブリュッセル自由大学(ULB)理学部Crop Production and Biostimulation Laboratory 博士研究員を経て、2021年4月より現職に至る
HP
https://www.qst.go.jp/site/ri-imaging/