研究者紹介 No.36

研究者紹介
更新日:2023年8月25日(所属・役職等は更新時)
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アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

高校1年生の頃に112番元素にコペルニシウムという名前がついたというニュースを聞き,「元素は増えるのか!」と興味を持ったのがきっかけです。後にニホニウムという名前が命名される日本初の新元素を発見した理研の森田浩介チームリーダーの元に高校時代から足繁く通い,森田さんが九州大学の教授になったことをきっかけに九大院へと進学し,研究活動をスタートしました。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

自分は民間や企業への就職は一切考えておらず,いくつかの研究職の公募に出して結果的に日本学術振興会の特別研究員PDに採用されました。元々そんなに進路は悩んではいませんでしたが,一度きりの人生なんだし,やりたい事をできるところまでやろうという気持ちで,研究職を選びました。

現在の研究について

現在の研究内容、おすすめポイントを教えてください

原子核の精密な質量測定に関する研究をしています。質量は原子核の最も基本的な物理量で,核の構造や安定性を決定する,極めて重要な物理量です。私は原子核,特に原子番号が104番を超える超重元素原子核や,中性子過剰なアクチノイド核領域に興味があり研究をしています。特に超重元素領域の原子核は生成率が極めて低いため,単一原子レベルでの精密質量測定を実施すべく,日々研究開発を泥臭く続けています。

研究を行う上で大事にしていること(モットー)を教えてください

私は研究活動において,自分の手を動かすことを大事にしています。元々ものづくりが好きという背景もありますが,自宅にもオシロスコープやボール盤,最近だと3Dプリンターも揃えて,いつでもアイデアをアウトプットできるような環境を作っています。自身の手で開発した検出器や測定回路を活かして成果が得られるのは,至上の幸福ですね。

あなたの好きな(縁のある)放射性同位体や元素を教えてください

KEKの私たちのグループで発見した新同位体241U(※)が好きです。人類のレガシーである原子核図表に,自分たちの足跡を残せたというのは科学者冥利に尽きますね。私たちは精密質量測定によってこの同位体を識別しました。今後の研究で崩壊特性等の情報を明らかにしていこうと考えています。
(※ 40年ぶりに中性子過剰なウラン同位体を新発見

研究の息抜きにしていることを教えてください

最近は忙しくて年に数試合程度しか行けていませんが,中日ドラゴンズの大ファンなので定期的に球場へ行って外野席で応援歌を歌っています。テレビ観戦は・・・ストレスも溜まるので最低限です(笑)。あとは読書やゲームも好きです。寝る前に布団でSwitchをしたりとか,静かなカフェでのんびりとコーヒーを飲みながら本を読んだりして,リフレッシュしています。

学生へメッセージ

アイソトープや放射線は,歴史的な経緯もありマスコミ等で負の側面ばかりが強調されてしまいますが,私たちの生活・社会基盤を支える極めて重要なものです。アイソトープを用いた基礎研究,特に私たちの研究分野である核化学は,物理学と化学の両方の知識が必要になる分野であり,要求される知識や技術の幅も広く非常にやりがいのある研究分野です。最先端の研究を自らの手で切り拓くことで,純粋科学の楽しさを味わって欲しいと思います。


庭瀬 暁隆(にわせ としたか)
専門
原子核物理学、核化学、放射線計測
略歴
2021年3月 九州大学理学府物理学専攻修了 博士(理学)、2021年4月 日本学術振興会 特別研究員(PD)を経て2022年4月より現職
HP
https://research.kek.jp/group/wnsc/