研究者紹介 No.18

研究者紹介
更新日:2021年8月18日(所属・役職は更新時)

アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

大学院進学を考えたとき、医学に関わる分子生物学を勉強したいと考え、進学先を探していたところ、放射線に感受性を示す遺伝病の研究をしている小松賢志先生(京都大学名誉教授)の研究室を見つけ、進学したのがきっかけです。研究設備はもちろんのことですが、同じ学内で近い分野の研究室同士が密接に連携しあっていて、非常に恵まれた環境でした。今でも当時の仲間たちと共同研究を続けており、人間関係が私の大きな財産となっています。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

一回きりの人生、とにかくやりたいことにチャレンジしようと思っていました。私自身、うまくいかなかったら、それはそれで良い経験になるという楽観的な考えの持ち主だからだと思います。不安は全然ありませんでした。何よりも海外、特にアメリカで仕事をしたかったので、留学という手段で比較的自分が行きたい場所が選べる研究職は、私に取って天職だと思いました。実際私は、大学は北海道、大学院は京都、留学先はアメリカ、現在の職場は東京、と高校の頃に描いていた人生で住みたい街に全て住むことができています。これも研究職のおかげだと思います。

学生の頃,熱中していたことを教えてください

今でも学生時代とやっていることは変わりませんが、色々な土地、場所を訪れるのが好きなので、時間があれば旅行に出るようにしています。研究職になると国内外の学会に参加するために色々な場所に行くことができ、その土地の人との会話や食べ物など楽しみがいっぱいです。

現在の研究について

現在の研究内容,おすすめポイントを教えてください

現在は放射線の生体影響を分子生物学、細胞生物学的手法で調べています。特に放射線が細胞核内のゲノムDNAに与える損傷と、それを修復するメカニズムの解明に興味を持っています。DNA損傷は発癌をはじめ、様々な疾患の原因になります。そのため、それを修復するメカニズムが細胞には備わっているのですが、非常に複雑で色々仮説をたてながら実験でそれを立証していくのは、難しいですが楽しいです。一方で、放射線は効率的にDNAに損傷を与え、細胞を殺す作用があるので現在では医学応用として癌治療にも利用されています。実験室でコツコツと、放射線の作用を癌細胞などの培養細胞を用いて調べて、それが多くの癌患者さんに役立つと考えるとやりがいのある仕事です。また、実験手法として動物発生学が好きなのでiPS細胞を用いて、神経細胞や皮膚細胞に分化させてからそれぞれの放射線影響を検討しています。

研究を行う上で大事にしていること(モットー)を教えてください

よく考え、よく実験することを大事にしています。どちらかのバランスが崩れると良い仕事ができません。また、研究に新しい知識と技術は不可欠ですので、新しいことをどんどん取り入れて自分が知りたい生命現象を解明していく、そのためにはよく勉強し、考え、実験するというサイクルになるような気がします。研究職は新しいことを学び続け、開拓し続けるというフロンティアスピリットがないといけないので精神的なタフさも必要になると思います。

研究の息抜きにしていることを教えてください

なんといってもランニングです。特に山を走るトレイルランニングが好きで、学生時代は実験の合間に大文字山によく走って登っていました。また、走る目標を作るため、大会にも定期的に出場するようにしています。留学先のアメリカでは仕事が終わった後、車で3〜5時間運転して現地のモーテルに泊まって朝からマラソン大会に出場したりしていました。現在は休日に家の周りを走る程度ですが、できるだけ、小さくても大会に出場してモチベーションを維持するようにしています。ランニング中は考える時間がたくさんあるので走りながら実験のアイデアを練っています。

学生へメッセージ

アイソトープや放射線を使った研究をしている(したいと考えている)学生へ一言お願いします

研究はそれ自体も楽しいですが、その研究が人の役に立つということに意義があると思います。放射線は正しい使い方をすれば様々な恩恵を人類にもたらしてくれます。私の研究分野では放射線の利用方法としては癌治療が一番近いですが、研究室にこもって実験をしているだけではなかなか実感が湧きにくいかもしれません。学生の間に病院や加速器の施設など、実際の現場で見聞を深めておいて放射線の重要性を体験しておくことが大事だと思います。


島田 幹男(しまだ みきお)
専門
放射線分子生物学、DNA修復、神経発生
略歴
2004年帯広畜産大学畜産学部卒業、2009年京都大学大学院人間環境学研究科修了 博士(人間環境学)、2009年~京都大学放射線生物研究センター博士研究員、2011年~セントジュード小児研究病院(メンフィス)博士研究員を経て2015年より現職