研究者紹介 No.17

研究者紹介
更新日:2021年3月22日(所属・役職は更新時)
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アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

大学の学部時代には、理学部の生物学科で脳に発現するたんぱく質の研究をする研究室に所属していました。当時脳や人の生体機能を計測する手段として、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、PET(Positron Emission Tomography)を知り、さらに生体機能をまるごと可視化する技術への興味から、大学院の修士課程から当時の工学系研究科システム量子工学専攻に進学し、放射線やアイソトープを利用する研究を始める事になりました。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

自身の性格上、企業への就職の方に不安があったこと、また学問自体に興味がありもう少し勉強を続けてみたいという思いがありました。加えて、運良く日本学術振興会の特別研究員(DC)に採択され、当時は特別研究員(PD)への継続変更ができる時代だったため、あまり不安はなく研究の道へと進みました。もちろん、日本の状況として、大学の研究者や教員にもうすこし待遇がよいとさらに日本の科学技術が進むとの期待はありますが、研究や学問に興味があれば選択して後悔はないと思います。

現在の研究について

現在の研究内容、おすすめポイントを教えてください

主に放射線といわれるγ線、α線、β線、中性子などを可視化・計測する手法の開発を行っています。また開発手法を用いて新たな医学量子イメージングの研究を行っています。これまでに存在していなかった可視化手法を発明することで、人体内での多分子同時撮像や新たな生体情報の可視化ができたりします。目には見えないため、計測には色々困難がありますが、研究を通して自分が知らなかった世界を見ることができるのが魅力です。放射線の発生機構やアイソトープを運ぶ分子設計、PETなどの医学利用、宇宙利用の観点では原子核物理、原子核工学、分子生物学、化学、核医学、宇宙物理学など広範囲の学問と深くつながっており、常に新たな視点を学ぶ事ができる研究分野です。

研究を行う上で大事にしていること(モットー)を教えてください

学生時代はまだ難しいかもしれませんが、自分の学問的な興味や疑問・原理に素直に研究をすすめることを大事にしています。新しい研究をやるときには、なかなか周囲に理解されない事もありますが、原理に戻ることで正しい方向性が見えると思います。一方で、異分野の研究者から新たな視点を貰う事も多く、興味があれば、全く違う分野でも研究会など参加し、未知の視点の発見や自分の考えが正しいかどうか、を自問するようにして研究を進めています。研究は誰もやったことがない未知のものに挑む必要があるため、原理に基づいた自分の信念と直感に反するものを受け入れる寛容さが必要ではないかと思っています。

今後の目標、展望を教えてください

今現在は、特に放射線、アイソトープを用いた量子生体、量子生命科学の分野に興味を持って研究をすすめています。今後は、これまでの放射線計測技術に加えて、色々な専門家と連携して、レーザーなどの光技術や電磁相互作用、超音波、量子計測などの他の原理を融合させた革新的な手法や技術の開発をすすめることで、制御も含めた研究と新たな応用を進めていくことを目指しています。

学生へメッセージ

アイソトープや放射線を使った研究をしている(したいと考えている)学生へ一言お願いします

アイソトープや放射線の研究は、その誕生と発展においてノーベル賞級の発見や研究と共に進んできたと思います。またX線診断やPET撮像、放射線治療等の放射線利用においても他の技術では困難な手法となっています。加えて、アイソトープや放射線の世界は物理、化学、医学、工学などの複数の側面から現象を見つめる知的探求という観点からも、長く研究する価値のある魅力的な分野だと思います。一方で、放射能や原子核の制御等の分野においては、未だ多くの課題が残されており、新たな研究や技術開発が常に必要とされています。
みなさんが行う新たな研究によって、さらに次世代の技術や応用が開かれると思いますので期待しています。


島添 健次(しまぞえ けんじ)
専門
放射線計測、量子計測、量子センシング
略歴
2009年 東京大学大学院工学系研究科修了 博士(工学)、日本学術振興会 特別研究員(PD)、 博士研究員、助教、特任講師を経て2020年より現職 (2017年-2020年 科学技術振興機構 さきがけ研究員を兼任)