研究者紹介 No.12

研究者紹介
更新日:2020年10月20日(所属・役職は更新時)

アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

2013年に博士(工学)の学位を取得した後は,一般企業でシステム開発業務に携わっていました。研究職ではないものの,モノづくりには研究要素もあり,楽しく過ごしていました。そんな中,突然「医療データの解析がしたい!」と思ってインターネットで検索して,たまたま岡山大学の山岡聖典教授(大学院 保健学研究科 放射線技術科学分野)を訪ねたのが"ラドン"との出会いでした。もちろん放射線など全くの素人で,非常に無計画で無謀な行動でしたが,当時は不思議とスムーズに事が進み,2018年には博士(保健学)を取得するに至りました。現在は工学と保健学の両分野にまたがって研究を進めており,今では,この道に進むのが自分の運命だったのだと思っています。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

大学院へ進学する以前は,医療情報学(川崎医療福祉大学 医療技術学部)を学んでいました。そのころ,ちょうど医療のIT化が急速に進んだ時代で,専門家(大学の先生,病院スタッフ,企業のSEやプログラマー)の働きで,日本の医療がガラッと変わったのを目の当たりにしました。このとき,私は,研究は社会を動かし,世の中を変え,人の役に立つ仕事なのだと知り,研究職にあこがれを抱きました。学部3年生のとき,研究がしたいとゼミ担当教員に相談したところ,それならば色んな世界を見ておくべきだとアドバイスをいただき,将来の可能性を広げるために広く情報工学を学べる他大学の大学院へ進むことにしました。その時点で,将来は,企業でも病院でも大学でもどんな場所でも良いので,自分にできる研究をしていこうと心に決めていました。

現在の研究について

現在の研究内容,おすすめポイントを教えてください

私の研究は,機械学習によるデータ解析で低線量放射線の生体影響評価(特にラドンの健康効果)です。生体影響は様々なものが複雑に絡み合って起こります。そこで,できる限り多くの情報を機械学習により総合的に評価すると,新たな見方ができるのではないかと考えています。近年,放射線生物学も情報工学も技術進歩が目覚ましく,両分野にまたがって研究を進めるのは大変ですが,このような自分の研究アプローチについて他の人に興味を持ってもらえたときには,大変やりがいを感じます。

今までで研究をしていて苦しかったこと,辛かったことを教えてください

私は元々医療情報学を学んでおり,大学院へ進学してから専門的に情報工学の研究を始め,30歳を過ぎてから放射線生物学を始めました。関連のある医療情報学から情報工学への転換でも新しい環境に慣れるには苦労しましたが,そこから,放射線生物学を新たに始めるのはとても大変でした。最初は,放射線や生物学の基礎知識がないために周りの方と話が通じないことに悩みました。わかったふりをしてあとでコソコソ調べたり,自分には無理だと挫折しそうになったりしましたが,素直にわからないことはわからないと伝えると,よりお互いを知ることができ,信頼関係が深まることを知りました。新しいことを始めるのは勇気がいることですが,わかってくれる人がいると信じて挑戦を続けることは大事だと思いました。

あなたの好きな(縁のある)放射性同位体や元素を教えてください

放射線の研究を始めるきっかけとなったラドン(222Rn)です。鳥取県の三朝温泉は,ラドンに富んだ放射能泉で,古くから疼痛の緩和効果などが知られ,今でも多くの方がその効果を求めて訪れています。三朝町は職場から車で30分ほどと近く,私も仕事やプライベートでよく訪れます。天然に存在するラドンは自然放射線の代表的なα線放出核種で,我々にとって身近なものです。一般の方々にもっと親近感を持ってもらえるよう,ラドンの魅力を引き出す研究を続けていきたいと思っています。

研究の息抜きにしていることを教えてください

毎日お昼休みにリフレッシュと運動不足解消のためにお散歩することにしています。カメラが趣味の上司と一緒に撮影しながら歩き,撮れた写真を見せてもらうのが大好きです。私も以前からカメラは好きで持っていましたが,最近,その上司の素敵な写真に触発され,マクロレンズを購入してしまいました。自然の中に美しいものや面白いものを見つけると心が癒されますし,肉眼では見えないマクロの世界は本当に美しくて感動します。同じ被写体でも,構図を変えたり,設定を変えたりすると全く違う印象の写真が撮れるのが,難しくて面白いです。研究や人生においても,ちょっと見方や考え方を変えれば全く違った結果が出てくるということを,写真を通じて学びました。

学生へメッセージ

アイソトープや放射線を使った研究をしている(したいと考えている)学生へ一言お願いします

アイソトープや放射線は,医療,農業,工業などに広く応用されています。そして,その技術を支える研究は驚くほど様々な分野にわたります。今は全く関係ないと思っている研究でも,もしかすると,どこかでアイソトープや放射線につながるかもしれません。まだまだ色んな可能性を秘めたアイソトープ・放射線の研究に,多くの人に挑戦してもらいたいです。私のように,偶然,放射線研究に出会い,その魅力を感じ,放射線研究の発展に共に取り組んでくれる人が出てくることを期待します。


神﨑 訓枝(かんざき のりえ)
専門
情報数理学,放射線健康科学
略歴
2013年岡山県立大学大学院情報系工学研究科電子情報通信工学専攻にて博士(工学)を取得後,IT企業で開発スタッフとして1年間勤務。2014年より岡山大学大学院保健学研究科放射線技術科学専攻で技術補佐員をしながら2015年同所属へ入学,2018年に博士(保健学)を取得後,現職。