平成10年10月30日
【外部放射線の測定結果に基づく管理区域の設定について】
平成10年10月30日
使 用 者 殿
販売業者
賃貸業者
廃棄業者
科学技術庁原子力安全局放射線安全課長
外部放射線の測定結果に基づく管理区域の設定について
放射線障害防止法の規制対象事業所における管理区域については、同法に基づく使用の許可等の段階において、基本的には計算を基にその範囲が設定されています。
しかしながら、許可段階では正確な線量当量等の算定が困難な場合もあり、計算に余裕を持たせて管理区域を広く設定している事業所もあり、このような事業所については、実際の使用等が開始された後に、外部放射線に係る線量当量の測定結果を基に管理区域の範囲を見直し、変更申請を行うことが合理的である場合もあります。
測定結果に基づき管理区域の設定を変更する場合には、測定が適切に行われていることが重要であるため、今回、別添のとおり、測定方法及びその結果に基づく管理区域設定基準等を示すこととしました。
つきましては、測定に基づき管理区域の範囲の変更を申請する場合には、別添に基づくようお願いします。
なお、ICRP Pub.60が国内法令に取り入れられる際には、本基準を見直すこととします。
外部放射線の測定結果に基づく管理区域の設定について
1. 背 景
放射線障害防止法の規制対象事業所における管理区域については、同法に基づく使用の許可等の段階において、基本的には計算を基にその範囲が設定されている。
しかしながら、許可段階では正確な線量当量等の算定が困難な場合もあり、特に密封の放射性同位元素、放射線発生装置を使用する事業所においては計算に余裕を持たせて管理区域を広く設定している事業所もある。このような事業所については、実際の使用等が開始された後に、外部放射線に係る線量当量の測定結果を基に管理区域の範囲を見直し、変更申請を行うことが合理的である場合もある。
測定結果に基づき管理区域の設定を行う場合には、測定が適切に行われていることが重要である。また、測定に基づき管理区域の範囲を変更する場合には、管理区域がその外側で作業する者の放射線量を制限する上でも重要な意味を持っている点にも配慮して、安全サイドに立って行うことが必要である。
そこで、今回、以下のとおり、外部放射線に係る1センチメートル線量当量の測定方法及びその結果に基づく管理区域設定基準等を示すこととした。
なお、ICRP Pub.60が国内法令に取り入れられる際には本基準を見直すこととする。
2. 1センチメートル線量当量等の測定
(1) 測定器の選定
外部放射線の測定に際し、測定器を選択するにあたってはX線、γ線又は中性子線の1センチメートル線量当量等が測定可能なもののうち、次の要件に留意のうえ適切なものを選ぶこと。なお、「1センチメートル線量当量等」には、サーベイメータ等の放射線測定器で得られた線量当量率(シーベルト/時)と熱ルミネッセンス線量計(TLD)等の積算型の放射線測定用具で得られた任意の期間の積算線量も含むものとする(以下、放射線測定器及び放射線測定用具を一括していう時は、「測定器」という)。
イ 測定器は方向依存性が少なく、エネルギー特性が1センチメートル線量当量の換算係数に合致する性能を有しているものを使用すること。
ロ 測定器の感度を最も高くした場合に測定しうる限度及び最小の一目盛又は指示値の大きさは、測定しようとする1センチメートル線量当量等が読みとりできる性能を有したものを選ぶこと。
ハ 測定器は、以上のほか日本工業規格等に適合しているもの又はこれと同等の性能を有しているものを使用すること。
ニ 測定器は、国家標準とのトレーサビリティが明確になっている基準測定器等を用いて、測定を実施する日の1年以内に校正されたものを使用すること。
(2) 測定箇所
測定箇所は、次に掲げる点を考慮して選定すること。
イ 人が立ち入ることが可能な管理区域境界の表面(管理区域境界が壁、天井、床の場合はそれぞれの外側)で線源に最も近い箇所又は遮蔽の薄い箇所等、1センチメートル線量当量等が最大となると予測される箇所を測定すること。
ロ 1センチメートル線量当量等が位置的に変化が大きいと予測される場合には、測定点を密にとること。
ハ X線、γ線と中性子線が混在する場合には、合算した1センチメートル線量当量等が最大になると予測される箇所を測定すること。
ニ 壁に対する測定点の高さは床面上約1メートルの位置とすること。
(3) 測定回数
外部放射線による1センチメートル線量当量等が時間帯により変動する場所をサーベイメータ等の放射線測定器で測定する場合にあっては、1センチメートル線量当量等が最も大きくなると想定される場合を含み複数回測定を行うこと。
(4) 測定上の注意
測定にあたっては、次に揚げる点を考慮すること。
イ 測定を効果的かつ安全に行うため、測定に先立ち、測定しようとする区域の1センチメートル線量当量等の分布の状況をあらかじめ確認しておくこと。
また、必要に応じ同種、同能力の他の照射装置、放射線発生装置等での測定結果を調査しておくこと。
ロ 測定器は、使用前に汚染されていないことを確認すること。また、放射線測定器については、放射線の影響の少ない場所において、電池の消耗状況の点検、零点の調整、チェッキング線源等による作動状況の点検等を行い、正常に作動することを確認しておくこと。
ハ 測定箇所のバックグラウンド値を調査しておくこと。また、測定結果はバックグラウンド値を差し引いた値とすること。
ニ 測定は、1センチメートル線量当量等の測定を熟知している者が行い、放射線取扱主任者がその測定方法及び結果について確認及び評価を行うこと。
(5) 測定方法
測定にあたっては、次に揚げる点を考慮すること。
イ 同一条件によって短時間の照射を繰り返す方法で使用する装置については、放射線測定器で測定する場合は、照射を行って1センチメートル線量当量率(シーベルト/時)を測定し、これに照射時間を乗じて一回あたりの1センチメートル線量当量を求め、これに1時間あたりの照射回数を乗じ、1センチメ ートル線量当量を求めること。
放射線測定用具での測定は、照射を繰り返す任意の期間を測定し、その測定時間を除じて1時間あたりの1センチメートル線量当量を求めること。
なお、使用する測定器が周辺機器からのノイズの影響を受けたり、極めて短時間の照射より、測定器が応答出来ない等、測定器の性能上、正しい測定結果が得られないことが予想される場合は、測定による方法では管理区域の変更は実施しないこと。
ロ 照射方向を変更して使用する場合及び放射線源を移動させる等、1センチメートル線量当量が変動する場合は、一定の作業区分となる時間等適当な時間にわたって1センチメートル線量当量等を測定し、1時間あたりの1センチメートル線量当量を求めること。
ハ 測定は、あらかじめ計算により求めた1センチメートル線量当量等の低い箇所から逐次高い箇所へと測定していくこと。
ニ 測定中は、必要に応じ放射線測定用具を装着すること。
(6) 記録
測定を行ったときは、測定日時、測定方法、測定箇所、測定者氏名、測定器の種類、型式及び性能(校正定数、校正日、バックグラウンド値)、測定結果、測定時の状況等について記録すること。
3. 測定に基づく管理区域の設定基準
測定により管理区域を設定する場合は、前述の測定結果に基づき、使用の許可等の段階における管理区域設定の考え方をもとにして判断すること。
測定時における放射性同位元素の使用量が減衰により許可された量より少ない場合、放射線発生装置の性能が許可された性能を下回っている場合等においては、測定により得た値をもとに許可量使用時、最大性能運転時の1センチメートル線量当量(以下「換算値」という。)を求めて管理区域設定に用いること。
なお、場の1センチメートル線量当量等の測定結果に応じ、事業者が1週間における1センチメートル線量当量を300マイクロシーベルト以下になるように管理区域境界付近における作業時間を制限する等の方法は認められないので留意すること。
判断基準は次に揚げるとおりである。
(1) 測定器により得られた1センチメートル線量当量等の測定値又は換算値(シーベルト/時)と1週間における使用時間(使用時間を定めて許可を受けている場合はその時間数とし、定めずに許可を受けている場合は48時間とすること)との積が300マイクロシーベルトを超えるおそれのある区域を管理区域とすること。
(2) 一つの装置について異なる使用条件がある場合には、それぞれについて上記の測定や計算を行って得られた値とすること。
(3) 2つ以上の装置が近接して設置されている場合には、それぞれの装置について得られた値を合計すること。