アイソトープ・放射線研究発表会 若手優秀講演賞 受賞者のご紹介

本賞は、若手の研究活動の奨励を目的とし、アイソトープ・放射線研究発表会において優秀な口頭発表を行った学生および若手研究者を表彰するもので、第49回(2012年)から実施されています。
受賞者の皆様の今後ますますのご活躍を期待いたします。

第58回アイソトープ・放射線研究発表会「若手優秀講演賞」受賞者

(会期2021年7月7日~9日)

受賞者(発表時の所属) 演題(講演番号)
授賞理由
天野 健太 氏
(量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 放射線医学研究所、千葉大学大学院融合理工学府)
重粒子線被ばくによるマウスB細胞リンパ腫の発生リスク(2408-13-04)
1週齢および7週齢のマウスに、重粒子線を照射してB細胞リンパ腫の発生リスクを調べた。1週齢マウスへの高線量の重粒子線照射で線量依存的にB細胞リンパ腫発生リスクが増加した。高線量の重粒子線照射で生成するB細胞リンパ腫では、非照射またはγ線照射で生じるリンパ腫とは異なる特徴的なゲノム異常が生じることが示唆された。この結果は長期の宇宙飛行に伴うリスクの評価にも役立つ。発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。
岩元 一輝 氏
(名古屋大学大学院工学研究科)
超高感度赤外レーザー吸収分光に基づくトリチウム分析に向けた基礎検討(1609-13-02)
赤外レーザー吸収分光を超高感度で行うCavity Ring Down Spectroscopy(CRDS)法によって、波長2μmの半導体レーザを用いてH2Oの分光スペクトルを得た。今後は中心波長2.2μmのHTOへの適用可能性を検討に進める。本手法によって前処理が簡便で放射性有機廃棄物が生じないトリチウム分析が可能になる。発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。
内山 剛志 氏
(東北大学大学院工学研究科)
放射性Naを用いた植物輸送体の体内動態(1406-08-03)
Na+輸送体HKT1の植物全体への生理的役割を解明するため、シロイヌナズナに22Naを用いてPETISとIPによってNa吸収及び体内循環を調べた。HKT1は導管から篩管にNaをため、組織先端へのNa蓄積を緩和することが示唆された。本研究は植物の耐塩性の解明に寄与する。発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。
尾幡 穂乃香 氏
(量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 量子医科学研究所)
加速器を用いた白金核種(191Pt)の製造および標識白金錯体の合成(29005-06-02)
Ir標的に30 MeV陽子を照射して191Ptを製造し、2種類の固相カラムを用いて191Pt塩化物を精製した。これを用いてキャリアフリーのシスプラチン標識体と、ヘキストのキレート標識体の合成に初めて成功した。191Ptは適度な半減期を有し、γ線とオージェ電子を放出することから、トレーサ研究と標的アイソトープ治療への応用が期待できる。発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。
貝塚 祐太 氏
(千葉大学大学院薬学研究院)
がんの標的α線治療を実現する211At標識アミノ酸誘導体の開発に向けた基礎的評価(29007-08-01)
ネオペンチルは生体内脱ハロゲン化反応に安定な放射性ヨウ素および211At標識体を与える。ヒスチジンにネオペンチル構造を結合、125I標識した[125I]Np-Hisを作製し、マウス体内動態を調べた。[125I]Np-Hisは生体内で安定であり、LAT1を介した良好な腫瘍集積を示し、211Atを用いた標的α線治療薬剤への応用が期待される。発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。
鈴木 碧海 氏
(茨城大学大学院理工学研究科)
放射線ストレスによる細胞内Ca2+濃度変化のライブセルイメージング法の検討(2408-13-01)
ヒト正常線維芽細胞にCa2+特異な蛍光プローブを導入し、蛍光顕微鏡を用いて多数の細胞の輝度の時系列変化を観察した。隣接する細胞群のCa2+濃度変化に細胞間距離との相関が推測でき、これをロトカ・ヴォルテラ方程式を基盤としたモデルによって再現することができた。本研究は放射線適応応答の解明につながる。発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。
橘 拓孝 氏
(千葉大学大学院 融合理工学府、量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 放射線医学研究所)
動物実験による放射線誘発B細胞リンパ腫の分子発がんメカニズム解析(2408-13-06)
放射線被ばくによるB細胞性急性リンパ性白血病の発症メカニズムの解明を目指し、非照射とγ線4Gy照射のマウスに生じたB細胞リンパ腫を対象に遺伝子解析を行った。被ばく後早期に誘発されたリンパ腫に特異的に、遺伝子X、Yの関わる放射線特異的な発がんメカニズムが示唆された。発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞の受賞に値すると判断した。
田中 ももこ 氏
(北里大学獣医学部)
めん羊における生体試料からの食肉中放射性セシウムの推定方法とその課題(19007-12-03)
食肉中の放射性Cs濃度の推定を目的に、安定Csを投与したラム、マトンを一定期間後にと殺、解体し、血液、尿、糞便、筋肉を採取してICP-MSにて測定した。尿中Csがもっともよい指標となることが示唆されたが、部分的に体内動態を用いたシミュレーションからの逸脱が認められ、さらなる検討が必要である。発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。

過去の受賞者一覧
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