アイソトープ・放射線研究発表会 若手優秀講演賞 受賞者のご紹介

本賞は、若手の研究活動の奨励を目的とし、アイソトープ・放射線研究発表会において優秀な口頭発表を行った学生および若手研究者を表彰するもので、第49回(2012年)から実施しています。
受賞者の皆様の今後ますますのご活躍を期待いたします。

第59回アイソトープ・放射線研究発表会「若手優秀講演賞」受賞者

(会期2022年7月6日~8日)
受賞者(発表時の所属) 演題(講演番号)
授賞理由
東 里沙 氏
(神戸薬科大学大学院薬学研究科)
酸化ストレスに寄与する炭素ラジカルを標的とした放射性プローブの開発及び病態モデルでの評価(2B01-04-01)
脳虚血再灌流時には脂質ラジカルの生成を起点として連鎖的な脂質酸化反応が生じ、細胞障害が惹起される。脂質ラジカルの実態解明のため、特異的に反応するニトロキシド誘導体を母体とした放射性ヨウ素プローブを開発した。一過性中大脳動脈閉塞/再灌流モデルマウス脳切片のオートラジオグラフィの結果から、非梗塞側に比べて梗塞側の高い集積が確認された。さらに集積部位は再灌流後の時間によって変化することから、部位によって再灌流後に脂質ラジカルの生成タイミングが異なることが示唆された。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。
石川 大洋 氏
(千葉大学工学部)
手持ち型検出器による術中ガイドPET「Scratch-PET」の画像化シミュレーション(2B08-13-06)
手術室で使えるPETはがんの外科手術に有用であるが、大きな本体と撮像時間が実現を阻んでいる。ベッド下に16×16配列のLYSO検出器を80個設置し、患者上に同じ配列のLYSO検出器を1個、手持ちまたはロボットアームによって走査する「Scratch-PET」とよぶシステムを考案し、性能をGeant4を用いたシミュレーションによって評価した。1MBqの陽電子核種を含む高さ5mm、直径が3から10mmのロッド状のファントムを6分間計測したところ、明瞭な画像が得られることが確認できた。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。
上木 太晟 氏
(東京大学大学院工学系研究科)
カスケード放射線放出核種の角度相関の計測(2B14-18-01)
In-111はカスケードに2つのγ線を放出する。線源を中心に8×8のCe:GAGGシンチレータアレイを円周上に8個並べた全512チャンネルの検出器系を作製し、γ線の角度相関を得た。相関が線源に磁場を印可した際に受ける磁気双極子相互作用による影響、pHを変化させた際の局所的電場勾配によって受ける電気四重極相互作用の影響を観測することができた。今後はイメージングを組み合わせた新たな計測、核医学診断手法の開発につなげる。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。
魚住 亮介 氏
(東京大学大学院工学系研究科)
ポジトロニウムの高分解能速度分布測定法の開発(1C01-06-03)
電子と陽電子からなる水素様原子であるポジトロニウム(Ps)を10K程度の低温に冷却したものは様々な基礎物理学検証の鍵となる研究対象である。Psの温度測定にはドップラー分光法が有利であるが、質量が小さいため通常の原子に比べてドップラー広がりが30倍以上広く、特殊な光源が必要である。Psの1S-2P遷移を誘起できる波長可変ナノ秒紫外レーザーの設計と開発を行い、予想と整合する数のPsの遷移を確認した。今後は低雑音で効率の高い励起Psの検出方法を確立し、冷却したPsの温度評価に進める。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。
近藤 太郎 氏
(麻布大学大学院獣医学研究科)
頸部CTスキャンを用いたサラブレッドの頸髄体積および脊柱管体積の解析(1C17-18-02)
身体検査で頸椎狭窄性脊髄症が疑われたサラブレッド29頭について、脊髄造影CTスキャンを行い、頚髄体積と脊柱管体積を算出して両者の比を求めた。脊髄体積は雄が雌と比べて有意に大きく、人の脳体積の性差と一致した。一方脊柱管体積には性差は認められなかった。体積比は1400日齢まで雄が雌よりも有意に高く、雄の脊柱管体積が不十分であることが頸髄圧迫を引き起こしやすく、頸椎狭窄性脊髄症の発症に性差がある理由と考えられた。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。
近藤 悠斗 氏
(京都薬科大学大学院薬学研究科)
ボロン前駆体を介した放射性ヨウ素化反応及びヒュスゲン環化付加反応の単一銅触媒による連続的な反応制御(2B01-04-04)
RIの間接標識法は自由度が高いが、一般に精製工程が複数回必要であり、収率が低下するという問題点がある。これに対してボロン前駆体を介したヨウ素化反応及びヒュスゲン環化付加反応を単一銅触媒により連続的に制御する手法を開発した。これにより連続的な試薬の添加によるI-125標識化合物の合成が可能となり、精製工程が1回に集約された。本手法はペプチドのRI標識にも適応できることが確認された。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。
髙田 悠太 氏
(東北大学大学院農学研究科)
キイロショウジョウバエにおける青色光毒性に対する耐性獲得と体重増加の関係(1B18-20-01)
昆虫にとって強い毒性を有する青色光に対する適応機構は全く分かっていない。キイロショウジョウバエに青色光を照射した後にも登攀能力のある個体を毎世代選抜し、適応性の向上が確認された後に解剖学的に比較した。選抜系統では非選抜時に生じていた繁殖力の抑制が生じることは少なく、また成虫の体サイズに差はないが体重が重く、脂肪体含有率が高いという特徴が見つかった。脂肪体はヒトの脂肪組織と肝臓に相当する器官であり、青色光毒性に対する適応性向上に関与していることが推測された。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。
眞下 大和 氏
(麻布大学獣医学部獣医学科)
サラブレッドのCT画像を用いた軸性骨格および付属骨格の体積計測による成長予測(1C17-18-01)
従来、馬の成長は体高や体重の計測だけで研究されてきたが、CT画像と画像処理ソフトを用いて頸椎と指骨・中手骨の体積を計測して骨の成長を調査した。頸椎では300~400日齢、指骨・中手骨は50日齢まで急激に増加した後緩やかになり、骨端板閉鎖時期よりも早期に緩やかになることが分かった。また頸椎狭窄性脊髄症は、頸椎の位置による体積差が生じることが発症に関与する可能性が示唆された。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。
松野 明未 氏
(千葉大学大学院融合理工学府)
水素添加in situ陽電子消滅測定による純鉄の水素誘起欠陥(1C01-06-04)
水素脆化については未解明な点が多い。厚さ500μmの溶体化処理した純鉄を水素添加しながら0.015及び15mm/minで延伸し除荷した2種類の試料について、陰極電解法により室温で水素添加しながらin situ陽電子寿命(PALS)測定を行った。水素感受性の低い15mm/min延伸試料では転位成分と空孔クラスター成分が検出され、水素感受性の高い0.015mm/min延伸試料では、転位成分より長い欠陥成分が検出され、転位成分と単・複空孔の成分が混在した寿命値と帰属された。空孔の挙動の差が水素脆化に関連していると考えられる。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。
八木 茄津未 氏
(防衛大学校理工学研究科)
ホウ素捕捉療法用リアルタイム中性子ビームモニターの長期運用評価に関する研究(2B08-13-01)
加速器を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)では、標的の損傷による中性子生成量の低下が問題であり、治療中にモニタできる装置の開発が求められる。薄型Si半導体検出器とLiコンバータを組み合わせた装置を開発し、実際のBNCT施設において1.5か月間設置して性能評価を行った。標準的なモニターである金線の放射化とよい一致を示し、標的の損傷によって中性子生成量が約3割減少したことをリアルタイムに検出できた。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。
山梨 太郎 氏
(東北大学大学院工学研究科)
植物のカリウム吸収・移行を調節する膜輸送体の機能解析(1D01-04-01)
植物の地上部におけるカリウムイオンの輸送についての情報は限られている。そこで栄養成長期のシロイヌナズナの野生株とkup12欠損株に放射性カリウムK-43を用い、イメージングプレートとGe測定によって植物体内の吸収移行を解析した。野生株に比べkup12欠損株の乾燥重量は54%に減少した。またkup12は導管特異的な地上部へのK+移行に重要であり、そのため古い葉へのK+輸送に重要であることが分かった。本発表は内容の構成や質疑応答が高く評価できることから賞に値すると判断した。

過去の受賞者一覧
第56回(2019年)・第58回(2021年)はこちら
第49回(2012年)~第55回(2018年)はこちら