文字サイズ: |
本賞は、若手の研究活動の奨励を目的とし、アイソトープ・放射線研究発表会において優秀な口頭発表を行った学生および若手研究者を表彰するもので、第49回(2012年)から実施しています。
受賞者の皆様の今後ますますのご活躍を期待いたします。
表彰式の様子はこちら
受賞者(発表時の所属) | 演題(講演番号) |
---|---|
授賞理由 | |
⽯下 燎⽮ 氏 (公益社団法⼈ ⽇本アイソトープ協会) |
⾃動滴下装置を⽤いて製造したベータ線表⾯放出率標準⾯線源の品質評価及び表⾯汚染サーベイメータ校正への適⽤評価(2C09-11-01) |
⾃動分注装置を改造して製作した⾃動滴下装置を⽤い,均⼀な放射能⾯密度分布を有する⼤きさが100×150mmのCl-36⾯線源を製作し,品質評価を⾏った。イメージングプレートスキャナを⽤いた均⼀性評価,ガスフロー式⽐例計数管を⽤いた⾯放出率の校正とスペクトル評価,GM計数管の機器効率測定の結果から,従来の製品と同等の性能を有し,放射能標準を付したβ線表⾯放出率標準⾯線源を製造できる可能性が⽰された。発表内容の構成や質疑応答も⾼く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。 | |
Nimish Sudhir Godse 氏 (筑波⼤学) |
Estimation of radionuclide source from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant using H-3/Cs-137 ratio(2B02-07-03) |
福島第⼀原発付近の海⽔中のH-3/Cs-137の濃度⽐は短期間では⽐較的安定していることから,トレーサとして有効である。原発港内の濃度⽐が沖合の値よりも著しく低いことは,港内の汚染が沖合の海⽔に⼤きな影響を与えず,港外にも汚染源が存在する可能性を⽰唆している。これは港外への推定漏洩率が港内を上回っていることからも⽀持される。濃度⽐の空間的および時間的な顕著な変動は,複数の汚染源が存在するか,サンプル採取の不整合を⽰している。近隣の河川,地下⽔の測定でも類似の傾向があり,詳細な調査の必要性を⽰唆している。発表内容の構成や質疑応答も⾼く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。 | |
根本 侑弥 氏 (千葉⼤学 薬学部) |
211At標識オクトレオチド誘導体の開発に向けた基礎的評価(2A01-02-01) |
At-211は標的α線治療に適している。しかし神経内分泌腫瘍への適応が期待されるオクトレオチド誘導体では有望な薬剤が開発されていない。Atと化学的性質が似ており扱いが容易なI-125を⽤いてモデル化合物を合成し評価した。2種類の化合物,[I-125]NpG-ee-TATEと[I-125]NpG-ne-TATEの正常ICRマウスへの投与では,後者は膵臓への選択的な集積と速やかな腎臓からの排出を⽰し,有⽤な特徴を備えることが⽰された。両化合物ともI-125は体内でも安定に保持されることが裏付けられた。発表内容の構成や質疑応答も⾼く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。 | |
村⽥ 睦歩 氏 (千葉⼤学 薬学部) |
Astatobenzoateを⽤いた⽣体内脱アスタチン化抑制構造の探索(2A01-02-02) |
At-211は標的α線治療に適している。At-211の標識部位としてastatobenzoate構造は汎⽤されるが,⽣体内で脱At化しやすい。原因は酵素によると考え,かさ⾼い構造を付加することによる改善を⽬的に,astatobenzoateにD-グルタミン酸を1〜3分⼦,同様にL-グルタミン酸,D-アラニン,D-リジンを3分⼦結合させた化合物を合成し,I-125およびAt-211標識してマウスの体内動態を評価した。脱At化は酵素認識によるものであり,本⼿法よって抑制することが可能であることが⽰された。発表内容の構成や質疑応答も⾼く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。 | |
森⽥ 樹 氏 (⿇布⼤学) |
X線尿路造影を⽤いた⼦⽜の膀胱の形態評価(1A02-05-04) |
⼦⽜の臍帯の感染による炎症は,膀胱と癒着し排尿障害を⽣ずるリスクがある。従来の超⾳波検査では腹腔内の臍帯遺残構造の癒着の評価は困難であったため,来院した⼦⽜13頭を対象にX線尿路造影を⾏った。全例で膀胱が描出され,縦の最⼤⻑を横の最⼤⻑で除したアスペクト⽐を求めた。排尿障害を⽰さない個体の平均1.90は,⽰した個体の平均5.73に対し有意に低かった。後者は⼿術によって平均は2.17となった。造影によって状態が悪化した個体はなく,造影によるアスペクト⽐の取得は⼿術の評価にも有⽤であった。発表内容の構成や質疑応答も⾼く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。 | |
吉⽥ 実⽣ 氏 (電気通信⼤学) |
99Ru放射光メスバウアー分光とその応⽤(2C07-07-01) |
Ruは多様な価数状態を⽰し,機能性材料に広く⽤いられている。Ruの物理的化学的知⾒は材料特性を知るうえで重要であり,メスバウアー分光は有⼒な⼿段であるが,線源に⽤いるRh-99は半減期が16⽇と短く制約が多い。RIを⽤いない放射光メスバウアーの確⽴を⽬指し,SPring-8においてRu⾦属,RuO2,Na2RuO3のRu-99メスバウアースペクトルを得た。Ru-nat⾦属を⽤いて測定したRu-99スペクトルの強度は2.1%であり,RIを⽤いた測定と⽐べ1.7倍⾼く,本⼿法が有効であることが⽰された。発表内容の構成や質疑応答も⾼く評価できることから、本講演賞に値すると判断した。 |
過去の受賞者一覧
第56回(2019年)~第61回(2024年)はこちら
第49回(2012年)~第55回(2018年)はこちら