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放射線影響研究所(放影研)に就職するまでは、放射線の研究をしていたわけではありませんでした。学部では看護を学び、卒論でがんの記述疫学に取り組んだことをきっかけに、がんに関わる研究を続けたいと思うようになりました。研究室の先輩にご紹介いただき、放影研を見学させていただいた際、疫学研究の歴史の長さや、唯一の貴重なデータであること、国際的な放射線防護体系の基盤のひとつであることなどのスケールの大きさを知り、私もここで研究したいと思うようになりました。
周りの友達のほとんどが看護師や保健師として就職していましたので、研究職を目指して進学するのは、正直、不安も大きかったです。ですが、卒論の研究が思いのほか面白く、もっと突き詰めれば人の役に立てるかもという手ごたえも感じ、大学院に進むことを決めました。その後も、ひとまず手を動かして目の前の研究を進めること、学会や研究会に参加して研究職の先輩方のお話を聞くこと、同じ環境の仲間と励まし合うことで不安を解消していました。
放影研では、広島・長崎で原爆に被爆された方々を含む約12万人を長期にわたって追跡し、放射線被曝とがん罹患や死亡の関連を調べています。一般的に、被曝線量とともにがんのリスクが増加し、被爆時年齢が若いほどリスクが高いことが分かっていますが、がんの種類によっては異なる傾向が見られます。疫学だけでは難しい課題もありますが、疫学研究を積み重ね、他の分野と共同研究することで、放射線による発がんメカニズムの解明に繋げられると信じています。
疫学研究で得られた結果の背景に、一人ひとりの人生があることを意識するようにしています。特に放影研では、無差別の原爆投下に巻き込まれた方々を対象にしています。自分が研究の対象になることに、抵抗を感じる方もいらっしゃると思います。そうした背景を忘れないためにも、折に触れて被爆者の手記や当時の記録を読むようにしています。
まずは大学院でご指導いただいた大野ゆう子先生から、自分が関わるからには楽しい研究にするという気概を学びました。思うように仕事ができないときは、超低空飛行でも飛び続けることが大切と励ましていただき、今もお守りにしています。 放影研に就職した当時の小笹晃太郎元部長からは、丁寧に堅実に結果を積み重ねていくことの大切さを学びました。ここまででいいかなと思ってしまうとき、小笹先生ならもうちょっと詰めるだろうと思い直し、あと一歩頑張るようにしています。
育児です。生きているだけで精一杯だった子が、できることを増やし、言葉を覚え、ままならないことに癇癪をおこしながら、それでも楽しそうに世界を広げていくのを見ていると、良くも悪くも肩の力が抜ける気がします。まだ一人で趣味の時間を確保するのは難しいので、一緒に楽しむことをモットーに、流行りの曲を教えてもらったり、折り紙に四苦八苦したり、プリキュアを応援したりしています。
研究職というと、高い志を持ち、寝食忘れて研究に没頭する選ばれし人種というイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。実際にそのような方もいて、それはそれで素晴らしく頼もしいですが、私はなんとなく目の前の面白そうなことに取り組んできて、気づいたら放射線疫学が楽しくなっていたパターンです。これはこれで結果オーライと思っています。まずは気軽に放射線研究をのぞいてみてください。