研究者紹介 No.62

研究者紹介
更新日:2025年11月20日(所属・役職等は更新時)
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アイソトープとの出会い~学生時代について

アイソトープ・放射線の研究を始めたきっかけを教えてください

大学4年の卒業研究時に同期が理化学研究所にある加速器を使用した原子核実験を行っており、その研究発表を聞いて加速器や放射線に興味を持ちました。修士課程からその研究グループに参加させていただき、加速器という非日常的な大きな装置を運転して実験するのが楽しかったのを覚えています。単純に大きな実験装置が好きという理由もありますが、私が加速器や放射線の研究を始めたきっかけはやってみたら楽しかったからです。

研究職に進むことを決めた当時の心境を教えてください

博士課程で私は医学物理工学の分野に進学し、放射線治療用の加速器や放射線検出器に関する研究をしていました。研究は楽しかったので特に深い考えもないまま漠然と研究職に進みたいなと考えていましたが、実際に明確に決めたのは博士号を取得する予定の年度になってからです。丁度その年度に自分の興味や専門性とよく合致した公募が出たためその公募にチャレンジしてもし採用されたなら研究職として頑張ってみようと思いました。公募内容やタイミングが非常によかったため、研究職に進むことを決めた当時の心境としては自分は運が良いなと思っていました。

現在の研究について

現在の研究内容、おすすめポイントを教えてください

現在私はSCRITSelf-Confining Radioactive isotope Ion Target)と呼ばれる核構造研究を目的としたRIイオン標的生成法の研究と、ビームリサイクルと呼ばれる希少RIの精密測定を目的とした実験装置開発を行っています。一般的に加速器を用いた研究ではビームや放射光をユーザーに提供して実験が行われます。一方、上記の二つの研究テーマでは蓄積リングと呼ばれる加速器そのものをある研究目的に特化させた実験装置として改造し研究を行っています。このような世界で唯一と言えるような実験装置を開発し、それでしかできない実験によって新しい研究領域を切り開いていくのはとても楽しいので、本研究のおすすめできるポイントだと思います。

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研究を行う上で大事にしていること(モットー)を教えてください

日々の研究活動(実験、解析や論文執筆など)において、それらのタスクはやる気があるうちにやり切ってしまおうという心構えを大事にしています。これはとても大事にしているつもりですがまだまだ遵守できておらず、やる気がでなくて後でやろうと思ってまだ手が付けられていない未発表のデータなどが割とあります。今後の研究人生でいつかこの心構えを一貫することができたら良いなと思っています。

今までで研究をしていて苦しかったこと、辛かったことを教えてください

日本語で良いと言われていた研究会のプレゼンテーションで前日に英語発表にしてほしいと要請があり、ほぼ徹夜で英語のプレゼンテーションの準備をしたのですが翌日の研究会で英語圏の方が欠席したためやっぱり日本語でも良いですと言われたときは辛かったです。

今後の目標・展望を教えてください

現在私の研究で使用している蓄積リングは加速器としてのミッションが終了し使用されなくなった蓄積リングを再利用しています。そのため研究目的に対して性能が十分ではない場面もでてきているため、定年までに私の研究目的に特化した蓄積リングを1から建設することが目標です。そのためにも現在の実験装置で研究開発を進め、大きな予算獲得を実現するだけの研究成果を挙げていきたいと考えています。

学生へメッセージ

やりたくないことを一生懸命頑張ることは大事ですがとても大変なので、なるべく自分が楽しいと思うことをやれば良いと思います。ただある程度やってみないと自分が楽しいと感じるかどうかも分からないと思うので、先ずは色々なことをやってみることをおすすめします。アイソトープや放射線の研究は科学的に重要な基礎研究から社会貢献に直結する応用研究まで幅広く存在するので、何かしら琴線に触れる研究テーマが1つ2つくらいはあるかと思います。


小川原 亮(おがわら りょう)
専門
実験核物理、蓄積リング
略歴
2017年 3月23日 北海道大学医学研究科 医学物理工学分野にて博士(医学)を取得、2016年420173月 日本学術振興会 特別研究員 DC2、2017年4月~2019年12月 QST博士研究員、2020年1月~2024年3月 京都大学化学研究所 付属先端ビームナノ科学センター 助教、2020年1月~2022年12月 理研仁科加速器研究センター 協力研究員(クロスアポイントメント契約)、2024年4月~現在 理研仁科加速器研究センター 技師
HP
https://www.riken.jp/research/labs/rnc/instrum_dev/index.html