| 文字サイズ: |

病院で看護師として勤務していた頃、小児がんの患者さんが多くいらっしゃる病棟で勤務していました。そのため、放射線治療を受ける患者さんも多くいらっしゃったのですが、子どもたちに「目に見えない放射線が体の中のできものをやっつけてくれる(当時幼児の子どもたちにはこんな説明をしていました)。」と説明している中で、ふと「放射線ってすごい!でも放射線ってなんだ?」と驚きと疑問をもったことが放射線に関心を持ったきっかけです。その後、現職場で放射線防護に巡り合うことができ、放射線に関する研究をスタートしました。
患者さんやご家族の生活がより良いものになってほしいという思いから看護師を目指しました。そして病院で働き始めるうちに、目の前の患者さんやご家族に何ができるかも大事だけれど、自分がエビデンスを作る側になりたいと考えるようになりました。正直なところ、臨床現場から離れることの怖さはありました。一方で、当時の上司や先輩が背中を押してくださったことは本当にありがたく、教育・研究の道へ進む決意を固めることができました。
医療従事者が安心して放射線業務につけることが、ひいては患者さんやご家族にとっても大切だという考えを持つようになり、特に看護職を対象とした放射線教育やそのための研究などに取り組んでいます。多くの看護職は理系科目を好まず、「放射線」と聞いただけで眉をひそめる人も少なからずいます。そのため、看護職が安全に安心して放射線業務に取り組めるように必要な知識や考え方を提示できるように取り組んでいます。看護職の皆さんから「なるほどね。こういうことが知りたかったのよ!」と言ってもらえた時は、心の中でガッツポーズしています。
放射線の分野に看護師!?と驚かれる方も多いかと思います。しかし、医療分野はもちろん、さまざまな場所で放射線が利用されるようになり、患者さんだけではなく地域の方々と放射線について話す機会も今後より一層増えてくると思います。そんな時、私たち看護師が放射線について科学的な根拠をもとに患者さんや地域の方々の想いや生活に寄り添った関わりができるような役割を担えたらと思っています。そのために、看護職者や看護学生が放射線看護や放射線防護について学びやすい環境を作っていきたいと考えています。
お世話になった先生方は数え切れませんが、小野孝二先生には、放射線とは何かを1から教えていただきました。また、研究においては、伴信彦先生に博士論文のご指導をいただき、ものの見方や考え方をご教示いただきました。そして研究結果を社会に繋げることの重要性について草間朋子先生には日々ご指導いただいています。草間先生からは、謙虚に、自律して、周囲に感謝を忘れず、あわてず・あせらず・あきらめず取り組むことの大切さを教えていただいています。
屋外ではランニングです。COVID-19が蔓延する少し前ぐらいからはじめました。5kmほどですが、走ると頭がスカッとして、悩んでいたことがとてもちっぽけなことに思えてきます。また、何か決断を迷っているには、走ることで腹が決まることが多いです。屋内では人に話に行くことが多いです。どんな内容であれ、人と話している中で頭が切り替わったり、見失っていたことに気が付けたりすることが多いと思います。
大学の感染症の授業の中でヒトの免疫機能について学ぶ機会があり、自己と非自己を見分ける免疫細胞の不思議に魅了されました。大学にはあまり免疫学に関する書籍がなかったので、都心の大型書店へ行って何時間も立ち読みしたり、なけなしのアルバイト代で大阪まで行ってセミナーに参加したことを覚えています。
放射線の分野は本当に学際的であると思っています。私は看護師として放射線に出会うことができましたが、研究や教育を通して、医療業界はもちろん、測定の専門家、生物の専門家、疫学の専門家など本当に色々な方と出会い、お話しする機会があり、自身の世界観が広がっていきます。1つの分野を極めていくと同時に同じ放射線を別の視点から見ている専門家の皆さんと話し合える放射線の分野はとても魅力的であると思っています。