クエンチング

 LSC法において最も注意を要する事項は,クエンチング(消光:Quenching)の防止,およびケミルミネッセンス(擬似発光)の抑制です。この消光や疑似発光現象を誘発する物質をクエンチャーといいます。通常,クエンチングには,
 1)ケミカルクエンチング
 2)カラークエンチング
 3)酸素クエンチング
 4)濃度クエンチング
などの要因が考えられます。この内,ケミカルおよびカラークエンチングが発生しやすいです。ケミカルクエンチングは放射線エネルギーの溶媒への転移および溶媒から溶質への転移を妨害し,カラークエンチングは溶質から蛍光への変換を妨害します。一般的なクエンチングによって図のようなβ線スペクトルの変位を生じ,計数効率を低下させます。

代表的なクエンチャーを強弱ごとに分類すると次の通りです。

炭化水素,エーテル,水,
エステル,アルコール,
フッ化物,シアン化物
<  ケトン,
臭化物
<  ヨウ化物,アミン類,
アルデヒド,フェノール,
ニトロ化合物

 測定試料の放射能を求めるためには,標準試料と試料のそれぞれの計数率比較が最も簡便な方法です。このためには,両試料のクエンチングが全く等しいことが望まれますが,実用上は同一でない場合が多いため,何らかのクエンチング補正が必要となります。
 また,ルミネッセンスにも前出のケミルミネッセンスやフォトルミネッセンスがあります。前者は化学反応によって引き起こされる擬似発光で,アルカリや過酸化物の添加などによって生じます。また,後者はサンプルやバイアルに紫外線が当たることで起こる擬似発光です。