目的別の核種

1.動物実験

2.細胞実験

3.環境放射能

 

 

1.動物実験

  • 有機化合物であれば、骨格に14Cまたは3Hを入れた化合物を使用するのが一般的。
  • ○なるべく代謝的に安定な部分を標識したものが良く、3Hよりも14Cが用いられる場合の方が多い。
    3Hで標識する場合は、水との交換反応により生体内の水へ3Hが移行すると、目的物とは違うもの(水)を追いかけてしまう場合があるので注意。
    3Hはβ線のエネルギーが14Cよりも低いためルミネッセンスの影響を受けやすいが、分解能が良いのでミクロオートラジオグラフィには適している。
    3Hと14Cで違う部分を標識して別々に検出することにより、より多くの情報が得られる。この時は、ひとつの化合物を3Hと14Cで標識しても、3H標識体と14C標識体を混合して投与しても良い。

     

    《その他の核種の利用》

    1985年〜1999年の薬物動態に関連する文献調査では、14C及び3H 以外に使用された核種に125I、35S、59Fe、57-58Co、65Zn、195mPt、75Seなども用いられるが,最近では少なくなっている。この中で比較的多いものは125I及び35Sである。125Iはタンパク質の標識(クロラミンT法等)で使用されることが多く(タンパク質の標識には111Inを利用した報告もある)、構造中に硫黄を含む化合物は35Sが利用されている。

     

    2.細胞実験

  • 遺伝子関連
  • DNAやRNAを構成する塩基中のリン酸を32Pや33Pで標識した化合物を用いる実験(Northern Blotting Analysis等)が多い。この標識されたリン酸もα位からγ位までのどこが標識されているかを選択することが可能である。

     

  • 細胞傷害性
  • 標的細胞にあらかじめ51Cr等を取り込ませておき,殺細胞効果のあるもので攻撃をさせることにより,攻撃を受けた標的細胞から漏出する放射能を測定することにより殺細胞性評価が可能となる。

     

  • 細胞周期の評価
  • DNA合成に必要となるThymidineを3Hで標識することで,細胞周期の評価が可能となる。

     

  • 転写因子結合活性評価
  • 目的転写因子に対応するオリゴヌクレオチド中のATPを32Pや33Pで標識することにより,転写因子の結合性を評価することができる。

     

    3.環境放射能

  • 年代測定
  • 主に14Cを用いた年代測定が有名である。植物の炭素吸収は生存中のみであり伐採等により炭素吸収は停止する。安定同位体の炭素は減少しないが,放射性同位体の14Cは半減期により減少する。この比率を測定することで伐採等の時期を求めることができる。

     

  • 温泉
  • 鉱物中に存在している226Raや224Raが地下水に溶出し,温泉として地上で利用されることがある226Raや224Raは放射性壊変により,それぞれ222Rn,220Rnとなる。このような温泉は「ラジウム温泉」または「ラドン温泉」と呼ばれている。

     

  • 核分裂生成物
  • ウランの核分裂に伴い,質量数約90と質量数約140を頂点としたさまざまな核種が生成されるが,有名なものは90Srや137Csである。半減期はそれぞれ28.8年,30.2年であり,ともにβ壊変を行う。