固体中放射能の測定

1.臓器・組織
 溶解法
 燃焼法

2.細胞・微生物

3.排泄物(糞)

4.TLCサンプル

5.ポリアクリルアミドゲル

6.フィルター

7.除タンパク時の沈殿物

1.臓器・組織

☆溶解法
  • 摘出した組織の一部分(小さな組織であれば全量)をガラスバイアルに採取し,溶解剤(ソルエン-350,ソルバブルなど)を添加する。
  • 最大0.2gの組織に対して,溶解剤を1〜2mL程度(脂肪など溶けにくい組織は小さめに)。10%ホモジネートの場合は1mLまで添加可能(ホモジネートの方が溶けやすい)。脳,腎臓,胃等の不均一な組織中濃度を平均して測定する場合や溶けにくい組織は,ホモジネートを調製してから処理を行うと良い。骨,歯のような硬組織はアルカリ性の溶解剤では溶けません(ギ酸で脱灰する等の処理が必要)。
  • 50℃でときおりかき混ぜながら,数時間加温して溶解する(大きさ,種類によっては加温しなくても溶解する)。
  • 30%の過酸化水素水を少しずつ添加し,カラークエンチングが起こらないように脱色する。少しずつ添加しないと泡を吹き上げてバイアルからこぼれ,大事なサンプルを失う上に周囲を汚染させるので注意すること。
  • 添加する過酸化水素水は0.5mLまで。サンプル量が多い場合は完全な無色にはなりません。あとはLSC側の補正を行いましょう。
  • シンチレータを添加する。溶解剤が通常のアルカリなのでケミルミネッセンスが発生しやすく,組織の影響でイオン濃度が高くなるので,適切なシンチレータ(ハイオニックフローなど)を選択する。
  • 使用シンチレータによるが,ケミルミネッセンスをなるべく抑えるために,しばらく放置してから測定する。できれば,15℃程度の低温で一晩放置すると良い。

  • ☆燃焼法(燃焼装置が必要,3Hと14Cのみに適用可能)
  • 摘出した組織の一部分(小さな組織であれば全量)を燃焼用のサンプル容器に入れる。サンプルの上限は,3Hで2g,14Cで1.5gされているが,きれいに燃焼させるためには,0.5g程度に抑える方が無難。脂肪は不完全燃焼しやすいので小さめに。下垂体,副腎などの小さな組織は早く燃えすぎてしまうので,セルロース粉末や紙などを担体として添加する。
  • 一晩程度放置して乾燥させると燃えやすい。燃焼補助剤(コンバストエイドなど)を1mL程度添加しても良い。
  • 燃焼装置を使用して測定サンプルを調製する。3Hは3H2Oとして,14Cは14CO2として回収され,自動的にシンチレータまで入れられるが,使用前あるいは使用後には,必ず既知放射能量の標準物質を用いて,回収率を確認しておくこと。
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    溶解法と燃焼法の違い
    溶解法燃焼法
  • 特別な前処理用の機器を必要としない
  • クエンチング,ケミルミネッセンス等の心配が無い
  • 回収率補正の必要が無い
  • 3Hと14Cの二重標識されたものを分離して回収できる
  • 着色を完全に無くすことはできない
  • 溶けづらい試料も処理できる
  • 骨,糞などの溶けづらいものは処理量が少なくなってしまう
  • 特別な機器が必要
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  • 3Hと14Cにしか適用できない
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  • 回収率補正が必要
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    2.細胞・微生物

  • 細胞・微生物5〜7mgに対して,ソルエン-350:水=8:2の溶液を1mL添加
  • 50℃で2〜4時間加温
  • シンチレータ(ハイオニックフロー10mL)を添加
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    3.排泄物(糞)

  • 試料を均一化する。乾燥してからコーヒーミル様のもので粉砕するか,懸濁溶液(ex:0.5%CMC Na水溶液,水など)を加えてホモジナイズする。乾燥物を粉砕するときは飛散による汚染や吸引による体内被ばくに注意する。
  • 乾燥粉砕したものをバイアルに採取し,20mgに対して0.1mL程度の水を添加する。ホモジネートの場合は最大0.2mLまでを採取する。
  • 溶解剤(ソルエン-350)1mLを添加し,50℃で1〜2時間加温して溶解する。
  • 30%の過酸化水素水(0.5mLまで)を少しずつ添加し,カラークエンチングが起こらないように脱色する。少しずつ添加しないと,泡を吹き上げてバイアルからこぼれ,大事なサンプルを失う上,周囲を汚染させるので注意すること。
  • シンチレータ(ハイオニックフロー)10mLを添加する。
  • しばらく放置してから測定する。できれば15℃程度の低温で一晩放置すると良い。
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    ☆糞は溶解しづらいので,燃焼法が効果的。処理法は臓器・組織の場合と同じ。繊維質が多く,溶け残って気になる場合は,酸性の溶解剤(次亜塩素酸,硝酸など)を使うと良い。

     

    4.TLCサンプル

  • 削り取ったシリカに水1mLを添加する。目的物質が水に溶解しない場合は,水の代わりにソルエン-350を1mL添加する(シリカからの抽出)。
  • 40℃で3〜5時間加温する。
  • シンチレータを添加する(10mL程度)。アルカリの溶解剤を使用した場合は,ケミルミネッセンスを低下させる適切なシンチレータを選択する。
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    5.ポリアクリルアミドゲル

    方法1
  • 1〜2mmのゲル片に5mLの水を添加する。
  • スターラーでゲル片を軟らかくし,50℃で2時間加温する。
  • 水保持能の高いシンチレータ5〜8mLを添加する。
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    方法2(多少,計数効率が良い)

  • 1〜2mmのゲル片に0.5mLのソルエン-350を添加する。
  • 50℃で3時間加温する。
  • ハイオニックフロー10mLを添加する。
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    6.フィルター

    セルロースアセテート
  • バイアルの底にフィルターを置き,水を0.1〜0.2mL添加する。
  • ソルエン-350を0.5〜1mL添加し,室温で30分放置する。
  • ハイオニックフロー10mLを添加する。
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    ニトロセルロース

  • バイアルの底にフィルターを置く。
  • フィルターカウント(シンチレータ)5〜10mLを添加する。
  • フィルターが溶解するまで数時間放置する。
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    7.除タンパク時の沈殿物

  • 沈殿100mgに対して0.2mL程度の水を添加して懸濁する。
  • 組織溶解剤による溶解法または燃焼法によって測定試料を調製する。方法は1.臓器・組織を参照のこと。
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