第56回アイソトープ・放射線研究発表会「若手優秀講演賞」受賞者決定のお知らせ

 2019年7月3日~5日に開催された、第56回アイソトープ・放射線研究発表会「若手優秀講演賞」の受賞者が、以下の通り8講演8名に決定しました。受賞者には表彰状と副賞が贈られました。

 この賞は、若手研究者による研究活動の奨励を目的とし、本研究発表会において優秀な口頭発表を行った学生または若手研究者の方に贈られます。
 今後のますますのご活躍を期待いたします。

第56回アイソトープ・放射線研究発表会「若手優秀講演賞」受賞者

受賞者(発表時の所属) 演題(講演番号)
授賞理由
大森 さくら 氏
(量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所、埼玉大学大学院理工学研究科)
難治性がん細胞に対する重粒子線の有効性検証 ―DNA二本鎖切断損傷応答を中心に―(1p-Ⅳ-04)
アスベスト暴露で発症する悪性胸膜中皮腫(MPM )は放射線療法を含むあらゆる治療法に高い抵抗性を示す。MPM患者の治療法を確立するため、MPM由来細胞株を用いた試験を行った。その結果、重粒子線照射がX線照射に比し、DNA二本鎖切断を誘導することで治療に有効なことを示した。本研究を踏まえ、動物モデルでの実験により、今後の治療への展開と適用が期待できる。また、発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞の受賞に値すると判断した。
島岡 千晶 氏
(北里大学大学院獣医学系研究科)
黒毛和牛における安定セシウム単回投与後の体内動態(第二報)(1a-Ⅰ-08)
10頭の黒毛和牛に塩化セシウムを投与し、投与前および投与後の血液、尿、血漿、直腸便を採取し、Cs濃度をICP-MSを用いて測定した。これらの結果を用いて非線形最小二乗法による動態解析を行い、いずれの臓器でも生物学的半減期は約30日と推定することができた。本研究の結果は、新しく信頼できるデータを取得した点で、今後の適用が期待される。また、発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞の受賞に値すると判断した。
銭 照杰 氏
(東北大学大学院環境科学研究科)
重金属高蓄積植物ハクサンハタザオ体内におけるカドミウムの吸収過程の追跡(1p-Ⅱ-04)
ハクサンハタザオによるCd吸収を明らかにするために107Cdを使用してPETの手法でCdの吸収過程を連続的に観測し、Cd元素が根から吸収され葉に移動してゆく過程を捉えた。CdはZnに比較すると根の吸収速度、根から葉への移動速度とも小さいことがわかった。本研究結果はこれまで不明であったCd元素の動態を明らかにし、Znの挙動とも比較できるようになり、この分野の新しい進展が期待できる。また、発表内容の構成や質疑応答も高く評価でき、本講演賞の受賞に値すると判断した。
塚田 海馬 氏
(東京工業大学科学技術創成研究院先導原子力研究所)
BLM遺伝子が制御するDNA損傷修復機構(2a-Ⅲ-04)
光過敏症や若年層がんを引き起こすBloom 症候群の原因遺伝子BLM に着目し、BLM-/-細胞を用いた実験を行った。この細胞は放射線、Cisplatin など様々なDNA 損傷誘導因子に対して高い感受性を示すこと、RPA集積を通してNHEJの阻害、またはHRを促進することで、突然変異を防ぎ細胞の安定性を保つ役割があることが示唆され、BLM遺伝子のDNA損傷時の役割を分子レベルで明確にした。また、発表内容の構成や質疑応答も高く評価でき、本講演賞の受賞に値すると判断した。
堀内 寛仁 氏
(早稲田大学理工学術院総合研究所)
電子線グラフト重合法を用いた微細構造を有する温度応答性細胞培養膜の作製(1a-Ⅲ-01)
温度応答性細胞培養膜に細胞と同程度の大きさの微細構造を付与することを目的に、グラフト重合法で膜に微細構造を導入し、その温度応答性が維持できるかどうかを実験で評価した。微細構造を導入した培養膜でも温度応答性を維持できることが接触角の測定から確認できた。この手法により、さらに高度な培養膜実現が期待できる。また、発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞の受賞に値すると判断した。
森 大輝 氏
(理化学研究所仁科加速器科学研究センター)
理研における頒布用精製42, 43Kおよび44mScの製造技術開発(1p-Ⅰ-09)
分子イメージング用RIとして期待される42, 43Kと44mScの製造開発を理研AVFサイクロトロンからの24 MeV重陽子を用いて、44Ca(d,x)42,43K, 44mSc反応で生成する上記RIを精製し、ガンマ線スペクトロピーにより生成収率、純度、不純物元素濃度、比放射能等を評価した。これらは実用的な製造法を構築するための基礎データとなる。また、発表内容の構成や質疑応答も高く評価できることから、本講演賞の受賞に値すると判断した。
森下 雅士 氏
(麻布大学獣医学部)
血管造影X線撮影およびCT撮影による子牛肝臓内血管走行の解析(2a-Ⅰ-05)
子牛臍部疾患から継発する肝疾患の診断・治療のためには肝内の血行走行を三次元で把握する必要があることから、X線およびCTを用いて肝内血管造影を行った。肝静脈枝は5枝が描出されるが、細分枝には個体差が見られた。この実験によりX線およびCT撮影が肝疾患の発生機序や病態把握の一助となること、正確な診断、適切な治療に貢献することが示された。また、発表内容の構成や質疑応答も高く評価でき、本講演賞の受賞に値すると判断した。
山田 恭平 氏
(東京大学大学院理学系研究科)
ボース・アインシュタイン凝縮実現を目指したポジトロニウム冷却Ⅰ(2a-Ⅱ-05)
ポジトロニウムを用いて初のボーズ・アインシュタイン凝縮を実現すれば、反物質にはたらく重力効果の精密測定、ガンマ線レーザー光源の開発に応用できる。142nsよりも十分短い時間で10 K以下のポジトロニウムを高密度で生成するために、安定した平均400mJの高強度かつ500nsの長パルスレーザーを開発し、ポジトロニウム用冷却レーザーの心臓部の開発の目処がたった。また、発表内容の構成や質疑応答も高く評価でき、本講演賞の受賞に値すると判断した。

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